群馬県のJR吾妻線「長野原草津口駅」から車で10分ほどの場所に、国鉄時代に使用していた「太子駅(おおし駅)」跡地があります。
群馬鉄山(入山元山)の貨物専用線として開業した路線で、群馬鉄山で採掘された鉱石を運搬する目的で使用されていました。1961年からは貨物だけではなく旅客営業を開始しましたが、1966年には群馬鉄山閉山に伴い貨物列車が廃止、1970年には旅客営業が休止、1971年に廃止となりました。
以前はその跡地が一般的な公園として遊具や公衆トイレが整備されていましたが、公園を整備した際に当時の鉄山に関する遺構が多数残されていることが判明したことから、太子駅を本格的に復元する計画が2014年に決定しました。
その後、クラウドファンディングで資金を調達してホームの復元と駅舎の復元を行い、2018年4月より現在の姿で一般公開を開始しました。
そんな旧・太子駅の近くを通りかかるタイミングがありましたので、現在の太子駅の様子を見に行ってまいりました。
探索日:2019年05月
復元された太子駅駅舎
こちらが太子駅跡地の入口である建物です。
当時の太子駅舎を再現して建てられたものです。
太子駅の構内に入るためには入館料が必要で、こちらで入館料200円を支払います。
(中之条町民と中学生以下は無料。)
受付の横には当時使われていた運賃表が飾られていました。
現在は名称が「東京山手線内」に変更された「東京電環」の表記や旧漢字が使われている、今では見ることのできない内容になっています。
室内には、当時使用されていた物の展示や、当時撮影された写真などの貴重な資料が残っていました。
太子駅に保存されている貨車
太子駅跡地にはホームが整備され、各地からやってきた貨車が展示されています。
数年前までは公園として草が伸び切っていた状態の場所でしたが、綺麗に整備され、ホームも新たに新設されました。
茨城交通 トラ1形貨車「トラ15」
1966年(昭和41年)に東武鉄道の杉戸工場で製造された貨車です。東武鉄道にいた頃はトラ105として、石灰石などの鉱石輸送に使用されていました。その後、1985年(昭和60年)に茨城交通へ移管、2008年(平成20年)には、ひたちなか海浜鉄道(茨城交通の分社)の所属となりました。
2018年11月12日に中之条町に譲渡され、ここ太子駅跡地に展示されています。
大井川鉄道 Cワフ0形貨車「Cワフ2・Cワフ3」
Cワフは、1953年12月に日本車輛製造で製造され、静岡県「大井ダム」の建設時に全4両が大井川鉄道で活躍していた貨車です。
全4両のうち長らく休車となっていた「Cワフ2」と「Cワフ3」の2両が、2018年(平成30年)5月19日に中之条町に譲渡され、ここ太子駅跡地に展示されています。
群馬鉄山(入山元山)に関する資料
群馬鉄山(入山元山)の鉄索ゴンドラ
鉄道車両以外にも太子線に関連のある群馬鉄山(入山元山)で当時使用していた運搬用のゴンドラと鉄鉱石も展示されています。
こちらは鉄索ゴンドラです。ロープウェイのようにこのゴンドラが幾つもぶら下がって、鉱石を山の麓へと運んでいました。
最近では、茨城県にある「日立セメント索道」が日本で唯一稼働していた鉄索ゴンドラ(架空索道)でしたが、2019年3月に運行を終了してしまいました。
こちらのゴンドラは地面に埋まっていたところを発見され、こちらの施設で展示しているとのことでした。
採掘した鉄鉱石を貨車に積み込む施設「ホッパー」
さて、太子駅の最大の見どころはこちらのコンクリートでできた「ホッパー」です。ホッパーとは、貨物列車の貨車に鉱石を積み込むための施設です。
本来はホッパー内に線路が敷かれており、そこに荷台が空の貨車が入線します。その後、ホッパーから貨車の上にジャラジャラっと鉱石を落とすことで、一度にたくさんの鉱石を貨車に積むことができます。
本来であれば、2階・3階建てのように上にも階層があるのですが、太子駅のホッパーは一番下の部分のみ残っています。
こちらのホッパーですが、写真奥が黄色・写真手前が灰色と色味が異なっていることが分かります。これは、ホッパーを建築した年代が異なるからだそうです。
太子駅を整備したタイミングで、当時の様子を再現するようにホッパー内の一部分に線路が敷かれています。
現在ではあまり見ることのできなくなったホッパーを間近で見学できるいい機会でした。なお、ホッパー内は老朽化に伴い立入が制限されていますので注意しましょう。
旧・太子駅の施設情報
- 【名称】旧太子駅
- 【住所】群馬県吾妻郡中之条町大字太子251-4(地図で見る)
- 【営業時間】10:00~16:00(12月31日と1月1日は休館日)
- 【入館料金】200円(中之条町民と中学生以下は無料)
- 【駐車場】あり。無料。
- 【公式サイト】旧太子駅 | 六合の里温泉郷組合