神奈川県を走るJR横須賀線の田浦駅には現在では使われることの無くなった線路が残っています。
この線路は田浦駅から海側に向かって伸びており、港にある米軍の田浦送油施設とを結ぶ貨物線でした。タンク車によりジェット燃料を運び出し、近隣の米軍基地などへ出荷していました。
1998年まで利用されていましたが、以降は休止、2006年5月に廃止となりました。
今回、この廃線を歩いてきましたのでご紹介いたします。
探索日:2018年09月
JR横須賀線 田浦駅
田浦駅のホームから側線(廃線跡)を見たところです。
現在では使われていないことから雑草が伸び放題で、線路をしっかりと見ることはできませんでした。
JR七釜トンネル
田浦駅の両側にはトンネルがあります。写真の3つの穴が開いているトンネルは「七釜トンネル」で、明治・大正・昭和と三代にわたって建設されました(左から順に昭和・明治・大正に建設)。貨物線は一番左の大きなトンネルです。
昔は駅周辺に鎌を失うほどの草が生えていたことで「失鎌」と呼ばれていましたが、SL蒸気機関車の「釜を失う」を連想させることから、同じ発音である「七釜」として、七釜トンネルと名前を変えたそうです。
相模運輸倉庫専用線/米軍田浦専用線
七釜トンネルを抜けると貨物線は大きくカーブを描き港方面へ。
曙機械株式会社の脇を抜けて、公道からその姿を見ることができます。
道路を超えて港へ。数年前までは踏切の跡が残っていたようですが、道路の舗装工事により線路と踏切が撤去されています。
反対側は真っすぐと線路が伸びています。
残念ながらこの先は港の関係者以外立ち入り禁止区域になっているのでここまで。
しかし、今、立っているこの場所には鉄道ファンならその価値が分かる貴重な線路が残っているのです。
線路と線路の平面交差「ダイヤモンドクロッシング」
それが線路の平面交差です!
鉄道では「ダイヤモンドクロッシング」と呼びます。
近くで見るとこんな感じ。
線路と線路が直角に交わっています。
線路の平面交差なんて今の時代見ようと思ったって簡単にみられるものではありません。
どれくらい貴重なのかというと、現役で使用されているダイヤモンドクロッシングが見られるのは国内で僅か6か所のみ。
また、ダイヤモンドクロッシングには直角に交わる「直交」と直角以外の「斜交」にも分類され、それぞれ3か所ずつ現存しています。
今回の貨物線は、ダイヤモンドクロッシングの直交タイプに値します。
そんなダイヤモンドクロッシングが、この場所にはなんと…!
なんと…!
2か所もあります!!!
廃線とは言えども、やべーぞ、こりゃ!(大興奮!)
ここにあるダイヤモンドクロッシングは、横須賀市が保存することを決定したようで、すぐ脇の道路の舗装工事をしたにもかかわらず撤去されることなく生き延びたみたいです。
近くを通りかかった際には、一目だけでも見に来てみてはいかがでしょうか。
廃線はまだまだ続きます。
砂利に埋もれているため分かりずらいですが、手前から赤いパイロンが立っているあたりまで線路が残っています。
以前は、奥に見えるトンネルの中まで線路が伸びていたようですが、今では撤去されています。現役当時トンネルは軌道と道路を併用していたそうで、数年前までトンネル内には「起動終端」と書かれた看板が残っていました。
線路の周囲には味のある倉庫がいくつも建っています。
そんな倉庫の前にも線路が続いています。
どんどん進んで行くと分岐点がありました。
右は行き止まりになっているので、左の線路を進んで行きます。
周辺に住み着いている野良猫ちゃん。
自転車に乗ったおじさんからエサをもらってお食事タイム。人懐っこい猫ちゃんでした。
こっちにも違う猫ちゃんがいました。
分岐を左に行き、ツタの生えたイイ感じの倉庫が出てきたら、まもなく終点。
引き上げ線が見えてきました。
手前の踏切。
草がボーボーです。長らく使われていないのがハッキリと分かります。
ここは転轍機がそのままの状態で残っていました。
訪問するのが遅く、道中色々なものが撤去されてしまった後だったので少し残念ではありましたが、最後に当時のままの状態で残っていた転轍機を見ることができて安心しました。