栃木県日光市にある足尾銅山。
1973年に閉山してから既に40年以上が経過していますが、今なお、足尾銅山からは“あるモノ”が淡々と湧き出ています。
鉱毒と言われる有害な重金属類を含んだ毒物(亜鉛やヒ素など)です。足尾銅山の坑道は全長約1,200kmと東京~博多間に匹敵するほどの距離。一度掘った坑道を埋めることもできないため、今なお坑道内から鉱毒が湧き出ています。
水と一緒に湧き出る鉱毒をそのまま垂れ流しておくこともできないため、そんな鉱毒を処理する怪しい危険な施設が人知れず足尾町の山の中に存在しているのです。
鉱毒を処理する鉱滓ダム
坑道から湧き出た鉱毒を処理する方法として「鉱滓ダム(こうさいダム)」を利用します。
(鉱滓ダムというのはダムの名称ではなく「種類」と考えてもらえればよろしいかと思います。)
すごく簡単に説明すると
- 湧き出た水と鉱毒をダムに流し込む
- 鉱毒をダム底に沈殿させる
- 上澄水だけを川に流す
という手順で鉱毒を処理します。
最終的にはダムいっぱいに鉱毒がたまると、ダムごと埋土して処理作業が完了となります。
足尾銅山には、この鉱滓ダムが人知れず山の中に存在しています。ダム底に溜まる鉱毒でダムが赤褐色に見えるのと、街からは見えない山の中で一般人が立ち入れない場所にあるところから「伝説の赤い池」と呼ばれています。
今回は、そんな一般の人の目につかない山の中に存在する「伝説の赤い池」を見に行ってきましたのでご紹介いたします。
鉱毒を沈殿させる“赤い池” 鉱滓ダム「簀子橋堆積場」
足尾銅山の鉱滓ダムは全部で3か所存在します。
2つは既に役目を終え埋められていますが、1つは現役です。
今回は現役の鉱滓ダムである「簀子橋堆積場(すのこばしたいせきじょう)」を見に行ってきました。
先ほども説明しましたが、鉱滓ダムは人目のつかない山の中に存在します。足尾銅山の簀子橋堆積場も同様で、山の中にあり、当然ダムへ続く道は関係者以外立ち入ることはできません。
では、どうしたら“伝説の赤い池”を見ることができるのでしょうか。
簀子橋堆積場の隣にある「金龍山」に登れば山頂から鉱滓ダムを眺めることができるらしい!ということで、早速金龍山に登ってみることにしました。
金龍山から鉱滓ダム「簀子橋堆積場」を眺める
それでは金龍山の山頂を目指します。登山口の最寄り駅は、わたらせ渓谷鉄道の通洞駅です。
通洞駅から足尾方面に歩いて1分ほどの場所に「蓮慶寺」というお寺があります。
警報機と遮断機の無い踏切を渡って右側の水色の手すりが付いた坂道が金龍山の登山口です。
坂道を上った後、右側の線路沿いの崖を進んでいくと、申し訳程度に設置された黒色のフェンスが山の上へと続いています。この黒いフェンスが登山道の役割を果たしているので、フェンス沿いに山道を登っていきます。
登山道という感じではなく獣道と言った程度の道を進んでいくので、それなりの覚悟が必要です。所々に倒木があったり、木につかまりながら進むような道になっているので、軍手は必須です。
山を登り始めて約30分程、黒色のフェンスが無くなると、見通しの良い場所、高圧鉄塔の真下に出てきます。ここから更に上に見える高圧鉄塔を目指します。
まだダムの姿を捉えることはできませんが、ここまで来たらあと少し。
いったん休憩をして再出発です。
金龍山山頂に到着
山に登り始めてから約45分。
遂に伝説の赤い池が姿を現しました。
この場所からでは見通しが悪いので、もう少し先に進みます。
ここから先、3分程度、断崖絶壁を進んでいきます。
この付近は風が強く滑落の恐れがあるので慎重に進んでいきます。
そして遂に目的の場所に到着です!
赤褐色に染まった鉱滓ダム「簀子橋堆積場」
誰に向けてなのか、簀子橋堆積場の案内看板が設置されています。
山頂から500mmのレンズで撮影+トリミングで、なんとか文字が読めるくらいに写りました。
簀子橋堆積場の隣には、既に役目を終えた鉱滓ダムの姿もありました。十数年後なのか何十年後なのか分かりませんが、いずれ簀子橋堆積場も同じように埋土されます。
動画で見る伝説の赤い池
私のYouTubeチャンネルにて、伝説の赤い池の風景を映像でもお届けしております。
まとめ:簀子橋堆積場を見に行く方法は登山をする
足尾の『伝説の赤い池』と呼ばれる鉱滓ダム「簀子橋堆積場」の姿を見るには、隣にある「金龍山」に登れば見ることができます。
金龍山に登るときの注意点
今回実際に金龍山に登ってみて思った点・感じた点をピックアップしました。
- 登山道ではなく獣道を登る感覚である
- 軍手は必須
- トレッキングポールが欲しい
- 秋は落ち葉で足元がよく滑る
- 気が緩むと滑落する恐れがある
- 山頂までの所要時間は45分~60分程度
金龍山に登ってみようと思っている方は参考にしてみてください。
簀子橋堆積場が見える場所は上記の写真の通りです。目の前が断崖絶壁になっている上に、滑落したら人生が終わるくらいの高さがあります。訪れる方は十分に注意しましょう。